あたらしく巣を分ける

 ミツバチの巣分け作業、朝7時からスタッフに同行させてもらいました。まず着いた場所は、増群のために巣箱を置いているタマリンド(※1)果樹園です。ここには6~8枚の巣枠が入った巣箱が75箱置かれていました。巣内で女王バチは産卵をしていますが、ここではローヤルゼリーの採乳はしていません。スタッフが手際よく、巣箱から女王バチを見つけると、その巣枠は残し、卵が産みつけられた巣枠をミツバチごと抜き出し、用意しておいた運搬用の空の巣箱に入れていきます。元の巣箱には2枚ほど巣枠を残し、また数日後には新しい巣枠を補充します。

 この日、10枚の巣枠が入った巣箱、15箱を車に積み込み移動しました。同じ場所で巣分けをすると、ミツバチは元の巣箱に戻ってしまい巣分けにならないので、それを避けるため離れた場所へと移ります。最初の所から車で20分ほど走ったチーク林には、空の巣箱が75箱、鉄製の足の上に整然と並べられていました。近くには蜜源となる花があり、スィートコーンも栽培されています。空の巣箱に巣枠を2枚ずつ入れて新しく巣を分けるのですが、この時はまだ女王バチはいません。1~2晩おいてから、羽化間近の女王バチがいる人工王台を1ヶだけ新しい巣箱に入れます。すぐに女王バチを入れないのは、働きバチが攻撃してしまうので、自分たちの巣に女王バチがいないことを認知する時間を設けるためです。

 自ら王台を破って出てきた女王バチは、その後約10日~2週間の間に、巣箱の外に飛び立ちオスバチと空中で交尾をします。その後は巣箱から出ることなく数年間も卵を産み続けるのですが、他所の養蜂家のオスバチと交配する方が良く、その相手は15匹以上にもなるそうです。羽化したばかりの女王バチは、色も薄くお腹も小さいのですが、産卵を始めるとお腹が長くなるので、その変化と巣房内の小さな卵を目視で確認します。順調に産卵が始まるとまた巣枠を増やしていきます。

 人工王台に移虫をし、普通は3日目にローヤルゼリーを採乳していますが、そのまま10日間ほど巣箱に入れておくと、たくさんの女王バチが生まれます。一つの巣箱に女王バチは1匹だけなので、羽化する前に別の巣箱に移さなければ、複数匹が羽化するとお互いに傷つけ合ってしまいます。女王バチの体の色が黒くなってきたら年老いた合図で、産卵も減ってきます。

 今年の2月末、ハチミツの採蜜が始まる前は約1,100巣箱あったのが、終わる頃には500巣箱にまで減りました。今は700巣箱ぐらいまで回復していますが、今後もローヤルゼリーの採乳をしながら、また1,000巣箱以上まで増やしていく予定だそうです。

 これらの新しい巣箱がミツバチで一杯になるまでには2ヶ月近くかかります。6月の時点では、700巣箱を12ヶ所に置いて採乳していますが、今後は巣箱を1,000箱以上まで増やし、15~16ヶ所に拡大する予定です。その規模で、年間に約500~600kgのローヤルゼリーが採れるそうです。気の遠くなるような地道な作業の繰り返し、そこには熟練された経験と観察力が要求されます。また、このチーム内での役割分担と協力こそが、年間を通した養蜂を支えているのだと、強く感じました。

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現地レポート

2015年8月号


<写真の解説>

1...チークの木陰で、空の巣箱に巣枠を入れていく

 

2...タマリンドの木陰に置かれた増群用の巣箱

 

3...タマリンド

4...産卵された巣枠をミツバチごと運搬用の巣箱に集めていく 

 

5...車に積み込んで、離れたもう一つの場所へ移動する

 

6..最初の場所から持って来た巣枠を2枚ずつ入れていく

 

7..巣を移したばかりの頃は、働きバチが新しい場所で十分に蜜を集められないので、最初だけは砂糖を補う

 

 

9..働きバチに囲まれる女王バチ

 

10..天然の王台。1巣箱に女王バチは1匹しかいられないので、見つけると取り除いておく

 

11..女王バチのサナギ、羽化の3日前ぐらい。写真を撮り合わった後、取材中、メモをしている間に、マヌーさんがペロリと食べてしまった

 

 

 

12..養蜂場の巣箱

 

13..巣房と呼ばれる6角形の部屋の中に、楕円形の白い小さな卵が見える、、、かな?

 

14..移虫針の先には、ふ化3日以内の幼虫がいる


15..養蜂場のスタッフ