龍眼って?ロンガン





 先月まで小さな白い花を咲かせ、たくさんの蜜を分けてくれた龍眼(ロンガン)、4月に入って小さな実をつけ始めました。日を追うごとに少しずつ大きく成長していますが、この時期、農家は追肥をし7月からの収穫に備えます。


 しかし、ここ数年は早出しのものもあり、チェンマイとバンコクを結ぶ国道沿いでは、お土産として早くから龍眼が売られています。

今回は、まだまだ日本では馴染みの薄い「龍眼」についてのお話です。

 

 中国語では「龍眼」と書き、「ロンイェン」と発音します。白い果肉の中に大きな黒い種があり、それが龍の眼に見えるところから、こう呼ばれるようになったそうです。英語では「Longan」、タイ語では「ラムヤイ ลำไย」と言います。

 「龍眼」の原産地は中国南部で、山岳少数民族の移動などにより、インドシナ半島へ持ち込まれた言われています。現在、龍眼を栽培している主な国は、タイ、中国、ベトナム、台湾ですが、タイが最大の輸出国です。タイで収穫される3割強が国内消費となり、そのほとんどは生食です。残りの約6割は乾燥(ドライフルーツ)や缶詰などに加工され、その大部分は中国、台湾、香港、シンガポール、ベトナムなどへ輸出されています。

 

タイでは、1994年以降、北部を中心に龍眼の栽培が急速に広がりました。品種は、果肉が白とピンクの2種類に大別できます。白い方が日持ちが良く、缶詰などの加工に適しています。ピンクの方は収穫後2~3日しか持ちませんが、果肉も厚く甘くて美味しいので生食用として人気があります。苗木を植えて約3年後に収穫が始まり、7年を過ぎる頃から収穫量が安定し、上手く管理すれば30年間は収穫できるそうです。成長した1本の木から平均で約200kgの収穫があり、実は茶色い皮で覆われ、果肉は白っぽい半透明で、直径3cmほどの大きさです。

 龍眼は、生で食べても美味しいのですが、乾燥させると甘さに深みがでて、また違った味が楽しめます。乾燥と言っても、大きく二通りの方法があります。一つは、丸ごと熱乾燥する方法です。パリパリになった皮をむいて食べると、種の周りについた果肉はレーズンやプルーンのような香ばしい甘みがします。この方法だと、加工時に皮をむいたり種を出す手間が省けますが、その代わり乾燥する時間が長くなります。乾燥後は、常温でも変色することなく保存が容易です。
 もう一つは、皮をむいて種を取り出して、果肉だけを熱乾燥するものです。こちらの方が甘みが際立ち、柔らかく、そのまま食べることができます。また、熱湯や熱いお茶、温めたミルクに浸してロンガン・ティーとしても美味しくいただけます。冷蔵庫で保存しておけば、数ヶ月間は金色のきれいな色と柔らかさを保つことができます。

 龍眼は甘い果物というだけではなく、昔から漢方としても利用されてきました。昔から中国では、鎮静作用や解毒作用、滋養強壮などの薬効を持つ漢方薬として、疲労や食欲不振、貧血、血色が悪い、なかでも物忘れやボケ防止にも効果があると重用されてきました。また、タイ伝統医療においては、根、葉、種、樹皮などを煎じて飲むと、それぞれに違った薬効があり、ハーブの一つと考えられています。果肉は水で煎じるか、アルコールに漬けて飲むと、脾臓の強壮剤になり、また、血行や心臓の働きを良くし、睡眠不足による疲労、寝つきが悪いなどの症状を改善すると言われています。

 ハチミツは、糖質が約80%を占めていますが、ビタミンやミネラルなども豊富に含まれています。龍眼の花から採れたハチミツは、色が濃くて香りが強いのが特徴ですが、カリウム、マグネシウム、リン、亜鉛、銅などのミネラル成分が豊富に含まれています。その上、龍眼が本来持っている様々な効用もあると言われています。

 いかがでしたか?「龍眼」を少し身近に感じていただけたでしょうか。日本では、まだまだ馴染みの少ない龍眼ですが、見かけたら是非食べてみてください。



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現地レポート

2015年5月号


<写真の解説>

1...龍眼の収穫風景。小枝ごと折り、後から房ごとに実をとる。早出しでなければ、7月~8月にかけて収穫する

 

2...龍の眼に見えますか?

 

3...今はライチが旬だが、道路沿いでは早出しの龍眼も売られている(2015年4月下旬撮影)

 


4...たくさんの実をつけた龍眼


5...常温でも保存できる。味もさることながら、皮を剥く作業がやみつきになり、食べ始めるとなかなか止まらない

 

6...皮のまま丸ごと実を乾燥させたもの。黒い部分が果肉で、中には種も残っている

 

7...皮を剥き、種を取ってから乾燥させたもの。甘くて柔らかいが、冷蔵しないと果肉の色が黒くなって固くなってしまう

 

8...龍眼の収穫風景。小枝ごと折り、後から房ごとに実をとる。早出しでなければ、7月~8月にかけて収穫する