先日、ランパーン県ガーオ郡へ養蜂の現場を訪ねて来ました。巣枠の内検をしている現地スタッフが、膨らんだ巣房のフタをナイフで切り取り、中から羽化前 のハチの幼虫を取り出していました。何気なく尋ねると、それらはなんとオスバ チの幼虫で、取り出した幼虫はスタッフが自分達で食べるというのです。巣箱の中でオスバチが増え過ぎないように調整をしているとのことでした


 来年3月からの龍眼(ロンガン)ハチミツの採蜜に向けて、現在も巣分けをし ながらミツバチを増やしています。新しい巣箱に女王バチを入れていくのですが、羽化した女王バチが産卵するためには、オスバチとの交尾が必要となりま す。たとえ巣箱の中で女王バチとオスバチが会っても、そこで交尾が始まることはなく、空中でしか交尾が行われないそうです。


 オスバチは、メスの働きバチのように蜜や花粉を集めることはなく、女王バチ と交尾するためだけに生まれてきます。交尾は、女王バチの後から馬乗りの姿勢で行われるのですが、その時、生殖器が女王バチにとられて腹部が切れてしまいます。つまり女王バチとの交尾が終わった後は、オスバチは死んでしまう運命なのです。中には空中で交尾できずに巣に戻るオスバチもいますが、繁殖期が終わってしまうと邪魔者扱いになります。


 いろいろな文献に、日本の養蜂では、秋から冬にかけて花が減る時期、仕事も せずに食べるだけのオスバチは巣から追い出されて死んでしまうと書かれています。現地スタッフに聞いても、そういう現象は見たことがないと言っていました。代わりにスタッフが巣箱の状態を確認して、オスバチが多い場合は巣箱から取り除き、人為的に数のバランスを保っているそうです。


 現地スタッフの話では、交尾を終えた女王バチがメスの働きバチを産み(有精)、交尾をしないメスの働きバチが卵(無精)を産むとオスバチになるとの説 明でした。違う資料には、オスバチの巣房は働きバチのよりも少し大きいので、 女王バチはその大きさの違いで、オスとメスを産み分けているという説明もありました。また、何らかの原因で、巣箱から女王バチがいなくなると、メスの働き バチが産卵することがあり、交尾をしていないので、生まれてくるのはオスになるそうです。巣分けの時期は、一時的に女王バチがいない状態になるので、きっと現地スタッフの説明の通り、働きバチがオスバチを産んでいるのでしょう。


 交尾のためだけに生まれ、巣で働くこともなく、交尾が終わると死んでしまうオスバチですが、ミツバチの社会を維持していくためには欠かすことのできない存在なのです。


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